中島らも『今夜、すべてのバーで 』読了。

 中島らも『今夜、すべてのバーで 』読了。
 僕は小学生の時に、同著『牛乳時代』をジャケ買い?したのですが、あれは確か舞台(喜劇)の脚本か何かで、「面白い人がいるもんだ」と思ったものです。彼の劇的な人生について知ったのは、彼が階段から落ちて亡くなった時の特集記事でした。
 詳しくは覚えていないのですが、うつになってから読んだ本の中で、彼について触れた文章がありました。曰く、「中島らもが飲んでいた薬の種類と量は、(何かしらの狙いがあったとしても)およそ常識的な精神科医の処方ではない。しかも、それらを内服しながら、あれだけの仕事をしていたというのはあまりに凄まじい」と。
 書くことが天職だったのだろうな、というのと、「常識的な」精神科医に当たっていればあるいは、というのが率直な感想でした。
 主治医とのめぐり合わせは非常に重要です。幸い、僕の精神科の主治医は(門外漢の素人判断ですが)「常識的な」方で、こちらの状況をよく汲んで治療にあたっていただいていると思います。
 本書はほぼ著者の体験談である、と、あとがきにありましたが、作中の内科主治医はフィクションなのでしょうか。若い患者が亡くなって、自分の無力さにエタノールをあおり、同じ患者である著者に対し「なぜ好きに飲んで体を壊したお前が生きていて、こいつが死ななきゃならん」と殴りかかる主治医。…いるわけありません。おそらくこの主治医は、もう一人の著者、自身の気持ちを代弁させたのでしょう。なんてな。
 それにしても、相当数の文献を読んでいるのでしょう。それが彼のもがき方であり、蜘蛛の糸の様なものだったのか。
 結果的に数々の名作を遺せた彼は、病気に一矢報いたわけです。凄まじい精神力。さて、僕は、どうなることやら。